ジャニーズ事務所における性加害問題への雑感
一週間前にジャニーズ事務所が創業者ジャニー喜多川の性加害問題についての見解を表明して何日か経った。
この件について、最初に火をつけたのはBBCのドキュメンタリーだったが、これは自分も興味があって視聴した。
そのときに思ったのは「よくわからんけど、日本人がみんななんとなく知っているような、でも触れないでいる問題について外国人がネタをかぎつけてきたんだな」ぐらいだった。
しかし、このドキュメンタリーを契機に一連の被害者たちが声を上げ始めたこと、その内容の詳細を見聞きする中で、これは日本人全体の問題だと感じるようになった。
自分はジャニーズのタレントは特にファンでもないし、どちらかというとこのような男性アイドルグループがなぜここまで人気を保ってきたのかは疑問が出る。
とはいえ、90年代に幼少期を送った人間としてはSMAPの影響力はあったように思う。木村拓哉主演の『ロングバケーション』が一世を風靡したのは記憶にあるし、SMAPの『SHAKE』を運動会の出し物のダンスで踊った。
紅白ではなんとはなしに、それ以外のグループの音楽も聴いてきた。
今回の一連の被害報告でわかったことは、自分が90年代に小学生だったころに自分と同じような歳の子供たちがまさに性加害にあっていたということだ。
現在39歳の元ジャニーズJr.二本樹顕理さんは13歳のとき、つまり1997年ごろにジャニー喜多川から性加害を受けたと述べている。
二本樹さんが述べている通り、性加害についてはジャニー喜多川のみならずその周囲の現場のマネージャーやスタッフ、そして親族経営の役員が知らなかったはずはない。
また、事務所の初代タレントグループであるジャニーズは1989年に『ジャニーズの逆襲』という本を上梓して、被害を訴えている。1960年代から性被害はずっと続いていた可能性がある。
このような疑惑があるにも関わらず、テレビ・エンタメ業界はジャニーズを大々的に売り込み続けた。そしてスポンサーであるたくさんの大企業は、宣伝効果を期待して起用し続けた。ジャニー喜多川による性加害は、それがあったとしても大声を上げず従順で自分の身体を差し出しても売れたいという意欲のある若者を選別する装置であったような気もしてくる。
日本人は、このような少年たちの人間性を歪める装置で作られた偶像(アイドル)をお茶の間で見せつけられていたことになる。その歪められた像をテレビ越しにみた子どもたち、もしくは(なによりも悲惨なことに)親が、醜悪な性加害工場へ純粋な精神と肉体を送り続けてきたと思うと胸が痛い。
音楽や芸能の文化に対する史上まれにみる大問題・冒涜ではないかと思う。
この問題に対して、どのようなけじめをつけるのか。
まずジャニーズ事務所は性加害者のついた社名を残していいわけはないと思うし、性加害を看過してきた役員はすべて交代するべきだろう。
テレビ番組、スポンサー企業はどのような対応をとるのか。これまでさんざん、間接的に少年たちを搾取してきたのだから、受動的な対応ではなく能動的に事務所に事実関係の確認・処分を要求するなりするのが正しい姿だろう。
ジャニーズの在籍タレントたちはもちろん加害者ではないし、被害者ももちろんいるだろうが、その事務所の看板でのしあがった以上はそれが今後枷になることも覚悟しないといけないだろうし、ファンのために本当になにをするべきかを考えるタームにあるだろう。
そして、われわれ一般の視聴者(ファン・非ファン)はどうするべきか。
「芸能界とは異質な場所で特定のルールがある。自分たちとは関係ないただの消費物だ」という態度でいいのだろうか。そういったものを自分の子供たちや家族に見せ続けただろうか。
そのようなことを考えるポイントにはあると思う。